楽園バージョンの高層ビル!?巨大な生物のような「Tavaru Restaurant 」
インド洋に位置する島国、モルディブ。1200もの小さな島々で形成される小さな国でありながら、さんご礁の美しさと温暖な気候で観光客を惹きつけてやまない。そんな南の楽園に、なんとも形容しがたい不思議な「高層ビル」が登場した。
不規則に膨らんだ形の、ワインの宝庫
チェコの建築事務所ADRが手がけた「Tavaru Restaurant」。特徴は生物を思わせる不規則に膨らんだ不思議な構造だ。円柱状にのびた建物に直線は見当たらず、弧を描くようにデザインされた各階を、外階段がつないでいる。透け感のある大きなカーテンを建物全体に張り付けることで、湿気の多い南国にも対応した、有機的なフォルムが完成した。
内部は、レストラン兼ワインバー。一階から三階までは吹き抜けの巨大なワイン貯蔵庫になっていて、その中でワインを味わえる。魅力は豪華な内装だけではない。ワインのセレクションが世界でも有数で、非日常な贅沢を目でも舌でも楽しめてしまう。
南国バージョンの「高層ビル」
海に建てられた水上コテージなどが有名なモルディブには、高層ビルというものはほとんどないといっていい。特に海辺にある建物は、一戸建てのコンパクトなデザインのものが多い。
そのため、六階建ての「Tavaru Restaurant 」を建設するにあたり、一番の課題はどうやって周囲の景観に溶け込ませるか、という点だった。海岸付近の立地で、周囲にはヤシの木が茂る、まさに自然のど真ん中。モルディブの景観を楽しめる展望台は欲しいが、せっかくの周囲の雰囲気をぶち壊しにしたくはない。そんなジレンマを解消するために採用されたのが、曲線と透け感だ。
前述のように、フロア、窓を含めて、曲線は一切ない。透けるカーテンは、生き物の皮膚のように有機的である。ううん、背の高い「高層ビル」も、南の楽園バージョンとなると、やはり一味ちがう。
(文=杉田真理子)